このファイルは llms.txt と呼ばれます。Anthropicは推奨しOpenAIは採用しChromeは監査対象にしました。一方でGoogleは2026年5月15日のAI最適化ガイドで、これを「サイト運営者が無視してよい施策」として明示しています。137,000ドメインを対象にした調査では、公開されていた llms.txt の97%が2026年5月にHTTPリクエストを1件も受けていませんでした。

AIエージェント向けにサイトを説明する llms.txt というファイルがあります。

採用している顔ぶれは強いです。

Anthropicは自社のガイダンスで推奨しています。

OpenAIはAgents SDKとAgentic Commerce Protocolで使っています。

Google Chromeは Lighthouse 13.3(2026年5月初旬)で「Agentic Browsing」監査カテゴリを追加し、このファイルの有無をチェックするようになりました。

置かれていることと、実際に使われていることは別です。

Googleは「無視してよい」と言っています

GoogleのJohn Muellerは、llms.txt を meta keywords タグに相当すると表現しました。

理由として、AIサービスはこれを使っておらず、botはファイルを要求していない、と述べています。

bot向けにMarkdownページを別途用意することは、時間の使い方として良くない、とも言っています。

さらにMuellerは、Search Off the Recordで「llms.txt では、LLMがどのサイトを出すかを判別できない」と明言しました。

そしてGoogle Searchが2026年5月15日に出したAI最適化ガイドは、llms.txt をサイト運営者が無視してよい施策の一覧に載せています。

理由は構造的です。

AI Overviews も AI Mode も、通常の検索と同じGoogleのインデックスから引いています。

だからインデックスに影響しないファイルは、Googleの生成面での可視性にも影響しません。

実測でも、ほとんど読まれていません

主張だけでなく、実測もあります。

Ahrefsが137,000ドメインを調べたところ、2026年5月時点で llms.txt の97%が0リクエストでした。

そもそもファイルを公開しているドメインは28%にとどまります。

リクエストが発生していた場合も、その大半は監査ツールと非AIクローラーでした。

名前のついたAI取得botの比率は小さいです。

つまり、置いてありますが読まれていない、という状態が実測されています。

ここで分けるべき2つのもの

この件の本質は、llms.txtの是非ではありません。

採用シグナルと効果シグナルは、別物です

  • 採用シグナル:Anthropic、OpenAI、Chromeが採用・監査対象にした(事実)
  • 効果シグナル:Googleは効果を否定し、実測では97%が読まれていない(事実)

この2つは矛盾していません。両方とも事実です。

矛盾して見えるのは、「大手が採用した=効果がある」と暗黙に接続しているからです。

わたしは20年以上、Webの運用に関わってきました。

この構図は初めてではありません。

meta keywords タグも、かつては「入れるべきもの」でした。

AMPも、大手の採用と公式の推奨がありました。

構造化データの一部も、推奨されましたが期待された効果は出ませんでした。

いずれも、採用シグナルは強いものでした。

そして効果シグナルは、後から別に検証されました。

llms.txt は引き継ぎ資料に似ています

理解しやすい比喩を一つ置きます。

llms.txt は、引き継ぎ資料に近いです。

引き継ぎ資料は、置いてあるだけでは読まれません。

そして、置いてあるからといって、あなたの部署が選ばれるわけでもありません。

ただし、すでに担当者が来ていて、中で作業を始めた後なら、確実に効きます。

Muellerが認めている限定的な用途は、まさにここです。

エージェントがすでにサイト内にいる場合の、ナビゲーションやタスク完了の補助です。

「どのサイトを選ぶか」ではなく「来た後どう動くか」に効きます。

これは小さい用途に見えますが、意味のある区別です。

自社サイトでエージェントに何かを完了させたい(予約、問い合わせ、資料取得)なら、検索順位とは無関係に、価値が出る可能性があります。

判断の線を引く

まとめると、こうなります。

置いてよい場合

  • 生成コストが十分に低い(既存のサイト構造から自動生成できる)
  • 目的が「エージェントがサイト内に来た後の回遊・タスク完了」である

やるべきでない場合

  • SEO目的での工数投下
  • 「対応しないと検索順位が落ちる」という前提での優先度付け
  • bot向けに別のMarkdownページ群を手作業で用意すること

Lighthouseの監査項目に入ったことは、ランキング要因になったことを意味しません。

計測されることと、評価されることは違います。

今日やること

新しい標準やタグの話が来たら、判断の前に2つに分けて書き出します。

  1. 誰が採用したか(採用シグナル)
  2. 効果が測定されたか、誰が測ったか(効果シグナル)

2が空欄のまま工数を出す判断をしていないかを確認します。

それだけ確認すれば、この種の判断はかなり安定します。